クライスラー社にエンジンを供給

クライスラー社にエンジンを供給

1966年、世界3大自動車メーカーのひとつである米国のクライスラー社から、UDエンジンに関する問い合わせが入ってきた。

「貴社が優秀な2サイクルディーゼルエンジンを製造しているという情報を得た。当社は、耐久性の高い高性能ディーゼルエンジンを求めている。貴社のエンジンが当社が望む性能を満たし、当社の規格をクリアするエンジンであるならば、ぜひ導入したい」というものだった。

この要請に応えて、直ちにUDエンジンのサンプルをクライスラー社に送った。クライスラー社が求めていたのは、小型船舶用、産業用の高性能エンジンであっクライスラー社に輸出されたUDエンジンとSDエンジンは、同社のマリン&インダストリアル部門により、プレジャーボートなどの小型船舶、小型の農業・産業機械向けのエンジンとして北米にとどまらず中南米にまで幅広く販売された。
米国では、SDエンジンに対抗できる小型ディーゼルエンジンがほとんどなかったので高い競争力を発揮して実績を伸ばした。クライスラー社へのエンジン輸出は1976年まで続けられた。

なお、この時期のSDエンジンに関する海外での実績として、日産自動車の「ダットサントラック」がある。燃費性能に優れたSDエンジンを搭載したダットサントラックは、日本だけでなく米国でも大きな市場を獲得した。この結果、SDエンジンは月産1万台を超える生産が続いたのである。そのため、同社ではUDエンジンを使って、それぞれの用途のために、自動車メーカーである当社が想定していないような苛酷な条件を設定してテストを繰り返した。

さらに、クライスラー社は、当社が高品質なエンジンを継続的に供給できる体制が整っているか、サービス部品を安定して供給できるかどうかということも念入りにチェックした。

クライスラー社のテスト・調査は、実に2年間にわたって続けられた。そして、最終的に、UDエンジンの優秀性、品質の高さ、耐久性などが認められ、1968年10月に、当社からクライスラー社にエンジンを供給する長期輸出契約を結んだのである。当時、日本の自動車技術はまだまだ欧米の水準に達していないと業界で信じられていたので、当社のエンジンがビッグスリーの1つに提供されるというニュースが報道されると、日本の自動車産業にとどまらず、産業界全体から、大きな賞賛を受けることになった。